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年金制度改正 厚労省案を発表
保険料率20%に(2022年度)
■骨子■
・厚生年金保険料率を段階的に引き上げ、22年度に20%で固定
・年金積立金を95年かけて取り崩し、給付水準5割以上を維持
・基礎年金の国庫負担割合を2分の1に引き上げる
・マクロ経済スライドを適用。前年度の名目年金額を下回る場合は、名目年金額を維持
・70歳以上の会社員・役員からも厚生保険料を徴収。一定以上の収入があれば年金額も削減
・週20時間以上の短時間労働者も厚生年金に加入
・夫婦の厚生年金分割、離婚時の厚生年金分割を制度化
※基礎年金の国庫負担を04年度から2分の1に引き上げ、出生率や経済前提が標準ケースで推移すると想定。
積立金取り崩し給付水準5割確保 厚生年金
厚生労働省は17日、04年の年金制度改正に関する同省案を公表した。厚生年金保険料率(現行13.58%、労使折半)を来年10月から毎年0.354%ずつ引き上げ、2022年度以降は20%に固定。年金水準が現役時の所得の50%(同59.4%)を下回らないようにするため、約147兆円ある公的年金積立金を95年かけて取り崩す。また給付の伸びを抑えるため、年金財政が安定するまでは年金改定率に公的年金加入者の減少率などを加味した「マクロ経済スライド」=「ことば」=を適用した。厚労省は年末に政府案を固め、来年の通常国会に年金関連法改正案を提出するが、負担と給付の水準に関しては政府・与党内も賛否が分かれており、政府案作りは難航しそうだ。
坂口力厚労相は17日、今回の改正とは別に基礎年金のあり方など制度体系の改正について、政府内に協議機関を作り検討したいとの考えを明らかにした。また、夫婦の年金分割などは年末の政府案に含めず、政府の協議機関で時間をかけて議論する意向を示した。
国民年金保険料1万7300円に固定
厚労省案によると、厚生年金と同様に、国民年金保険料(現行月額1万3300円)も05年4月から毎年600円ずつ引き上げ、11年度以降、月額1万7300円に固定する。高額所得者に対する年金課税強化を打ち出したほか、基礎年金の国庫負担割合(現行3分の1)を04年度から2分の1に引き上げる問題は、5年程度で段階的に実施する方針も記した。
これらの前提を条件とすれば、給付水準はモデル世帯の場合、2013年以降、54.7%(標準ケース)を維持でき、少子化と経済状況が改善した場合は最終的に56.5%となる。
現在週30時間以上勤務している人が対象の厚生年金適用については、週20時間以上に緩和し、短時間労働者の加入を拡大する。離婚時に夫婦が厚生年金を分割して受け取れるようにするほか、離婚しなくとも専業主婦の妻などが夫の厚生年金保険料の半額を負担したとみなし、老後に夫の厚生年金の半分を受給できるようにする。【吉田啓志】
少子化影響分を調整、給付抑える
厚労省案の特徴は@厚生年金保険料率を2022年度以降、年収の20%(労使折半)に、国民年金は11年度以降、月額1万7300円でそれぞれ固定するA約147兆円の年金積立金を取り崩すことで、50%以上の年金水準を確保する━━ことを明示した点だ。負担の上限と受給の下限を示すことで、現役世代の年金への不信感払拭を狙った。
これに加え、導入を目指すのが、年金財政が安定するまでの間、賃金や物価上昇率から少子化の影響分を「スライド調整率」として引いたものを年金改定率とし、給付水準の伸びを抑える「マクロ経済スライド」だ。
当初厚労省は、少子化による公的年金加入者の減少率だけを「スライド調整率」とする予定だった。しかし、平均寿命が延びて受給者が増えることも考慮し、平均余命の伸び率分も調整率に加えることになった。
また、「保険料20%以下、給付水準50%以上」を維持するためには、「団塊の世代」や「団塊ジュニア」という今後訪れる人口の多い二つの世代を乗り越える必要がある。
このため同省案は、「団塊ジュニア」が受給を始める2050年ごろから年金積立金を本格的に支給に回し、95年後の2100年度には1年分の年金支給額に相当する22兆円(04年度価格)まで積立金を減らす考えを示している。ただ、同省案では、今後20年にもわたり保険料が上がり続けることになり、世代間の不公平感はぬぐいきれない。「政治の介入があった場合、本当に予定通り保険料を引き上げられるのか」との指摘も少なくない。
同省は5年ごとに95年先の財政計画を見直すが、5年後時点の出生率などの見通しが今回と同じなら、最終年度の2105年度に1年分の積立金を残すため、その前段で積立金を増やさねばならない。その財源は給付水準の微減で生み出さざるを得ないのが現状だ。
マクロ経済スライド 年金額を自動的に上下
今回の年金制度改正案で、厚労省が打ち出した考え方で、年金給付の伸びを抑えるために、マクロ経済指標の変化に応じて、自動的に給付額を上下させる仕組み。
厚生年金の給付水準は新規受給者の場合、現役世代の1人当たりの賃金の伸びに、既に受給している人の場合は物価の伸びに応じて、それぞれ前年度額を改定している。
現行の方式は、73年にインフレによる物価上昇で年金額が実質的に目減りしたため、導入された。89年以降は、前年の消費者物価指数の変動に合わせて翌年の給付額を自動的に改定するようになった。
人口増加による経済拡大を前提にしてきた。しかし、少子化で現役人口が減少し保険料収入総額が減る中で、今までと同じように1人当たり賃金の伸びに応じて改定すれば、年金財政が圧迫される。このため、現役世代全体の減少率と平均余命の伸び率を足した「スライド調整率」を新たに設定。新規受給者分の改定率は、1人当たり賃金の伸び率からスライド調整率を差し引いた割合とし、既に受給している人の改定率は物価上昇率からスライド調整率を引いた割合とする。
2003年11月18日 毎日新聞