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年金空洞化深刻に
「国民」未納37% 企業も「厚生」脱退
小泉自民、有権者に改革案示さず
国の年金制度の空洞化が深刻化している。自営業者やフリーターらが加入する国民年金は02年度の未納率が37.2%と過去最悪を記録、サラリーマンの厚生年金も脱退企業が増加、これ以上の負担は困難と経済界総ぐるみで悲鳴を上げている。抜本改革を先送りしてきたツケが一気に回ってきた形だが、政治はそれをどう解決するのか。現状を報告し、改革案を整理、国民は何を選択すべきなのかを問う。
「僕が老人になるころは年金ないでしょう。友達はみんな、そう言ってるし、僕もそう読んでる。この先、どんどん老人が増えて(人口構成は)逆ビラミッドになるし、国(の財政)も赤字まみれだっていうんだから」
東京都豊島区に住むフリーターの男性(21)が言う。昼間は週5日、水道設備会社で働き、それ以外に週2日、コンビニで深夜勤務に就く。合わせると手取り月収は20数万〜30万円にはなるが、国民年金の保険料は払ったことがない。社会保険事務所から時々、送られてくる催告状は中身も見ずに捨てているという。
「(年金の受給が)65歳か70歳か知らないけど10年先も読めないのに、そんな先のこと分かるわけないですよ」
厚生年金でも、倒産、休業で制度からこぼれ落ちる企業が急増、02年度の脱退は過去最高の9万738事業所に上った。
急速な少子高齢化で年金財政が危機に陥り、制度に不安と不信を募らせる若い世代が保険料を払わない。空洞化がさらに不安と不信を再生産する。
この悪循環をどう断ち切るのか。衆院選を前に、各党、団体からいくつかの案が出ている。民主党は、基礎年金の一部に消費税を入れた年金体系一本化案を主張、日本経団連も消費税主体の給付削減案を発表した。
問題は、小泉自民党案の行方だ。政府部内では、給付維持を目指す厚生労働省と、給付削減を掲げる財務省が対立、1日の衆院予算委でも坂口力厚労相が「増税」の必要性を認めたのに対し、谷垣禎一財務相が明言を避けるなど、足並みの乱れを見せた。小泉純一郎首相は、11月厚労省案、12月政府案策定との日程を明らかにし、首相官邸に二橋正弘官房副長官を中心に、財務、厚労事務次官を集めた協議を再開した。
首相の選択は、選挙での具体的論戦を事実上断念することだ。千葉大の広井良典教授は「年金など社会保障議論は、官僚主導の財政帳尻合わせに終始してきた。各党が社会保障の規模や財源など全体のビジョンを提示し、国民が選挙で選ぶスタイルにしなければ、将来世代へ負担を先送りするだけだ」と警鐘を鳴らしてている。【友田達郎】
年金積立金 財政悪化で取り崩し
厚生年金財政の将来見通しの計算に使われている年金積立金(01年度で約175兆4000億円)が02年度で、初めて取り崩される見通しになった。厚生労働省関係者が1日明らかにした。公的年金財政の悪化が、予想以上に進行している現実が浮き彫りになった。
02年度の決算数値は現在集計中で、厚労省は発表していない」しかし、02年度の予算や積立金運用状況を調べたところ、@当初3兆1570億円見込んでいた国保有の年金積立金の運用収益が株安で約2400億円にとどまったAこれにより01年度1.99%あった運用利回りが0.17%(速報値)に低下、企業が代行運用している厚生年金積立金分(約36兆円)の運用利益(01年度は1兆2000億円)も大幅低下が見込まれる−ことがわかった。
02年度は、農林漁業団体職員共済組合(農林共済)吸収合併による1兆5800億円という臨時収入があり、積立金は本来なら増額する予定だったが、予想を超えた運用環境の悪化や保険料収入の減少で、積み増し分が相殺され、さらに積立金の一部を取り崩す見込みになった。
03年度予算も、企業が代行運用をやめて国に返上する厚生年金積立金約3兆2000億円の大部分を年金給付などに回さざるを得ない状況で、さらに積立金が取り崩される可能性があるという。【吉田慎一】
2003年10月2日 毎日新聞