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厚労省「今年分だけ下げて」

財務省「凍結分まとめて」

年金「物価スライド」の攻防


 物価の動きに合わせて公的年金給付額を増減させる「物価スライド制」をどこまで実施するかが、04年度予算編成の争点に浮上している。財務省は今年の物価下落分に加え、過去に引き下げを凍結した分も合わせて物価スライドを完全実施したい考えだが、厚生労働省は年金受給者への配慮から今年分だけにとどめるよう主張。決着は年末の予算案決定ギリギリまで持ち越されそうだ。【塚田健太】

来年度予算編成争点に

 財務省は、04年度予算の一般歳出を「実質的に03年度以下の水準に抑制する」という政府方針を実現させるためには、1兆円弱に達すると見込まれる社会保障関係費の自然増も厳しく抑制する必要があるとみている。

 このため、焦点の物価スライドについては、今年の物価下落分(政府見通しマイナス0.4%)と過去の引き下げ凍結分を合わせ、計約1000億円の年金給付を減額する方針。8月初めに決定する概算要求基準(シーリング)でも、凍結分を含む完全実施を前提に社会保障関係費の増加抑制を目指す。

 財務省は、財政状態が悪化の一途をたどっている年金制度を立て直すため、保険料の引き上げとともに、抜本的に給付水準を見直し、引き下げることが不可欠と判断している。しかし、景気の先行きが依然として不透明なうえ、予算編成期と重なる年内の解散・総選挙が濃厚になる中、「現在支給している年金を大幅にカットすることは、事実上難しい」(塩川正十郎財務相)。このため、04年度予算編成では物価スライドを完全実施し、年金改革の糸口をつかみたい考えだ。

 これに対し、厚労省は「景気に配慮すべき環境に変化はない」と凍結継続を譲らない構えで、坂口力厚労相は「過去の凍結分(の実施)は考えていない」と強調。凍結分の約850億円をシーリングの枠外で要求する方針で、政局をにらんだ与党内の動きと合わせ、決着は年末の04年度予算案の決定直前までもつれこみそうだ。

 今年の消費者物価が政府見通し通りマイナス0.4%で推移した場合、物価スライドを今年分だけ実施すれば、厚生年金の標準モデル(夫婦、月額23万6000円)は月額約950円、国民年金(夫婦、月額13万2000円)は同約530円の減額となる。過去の凍結分も含む完全実施の場合は、厚生年金が同約5000円、国民年金が同約2800円減額されることになる。

物価スライド
 年金給付額の実質的な価値を維持するため、物価の変動に応じて給付額を改定する制度。74年度から導入された。前年(1〜12月)の消費者物価指数の変動に応じ、翌年4月から自動的に年金給付額が改定されるが、99〜01年の累計1.7%の物価下落分は特例法により物価スライドは実施されなかった。ただ、03年度予算では、02年の物価下落0.9%分について物価スライドを適用し、年金給付額が減額された。

2003年7月15日 毎日新聞