厚生労働省は3日午前の社会保障審議会年金部会に、離婚した際の厚生年金の受給権を夫婦間で分割する案と、遺族厚生年金の見直し案を提案した。離婚時の年金受給権の見直しは中高年層の離婚増加を受け、離婚女性の老後などを保障するのが狙い。遺族年金制度の見直しは、働く女性と専業主婦の間の不公平感を是正するものだ。いずれも04年の年金改正での実現を目指す。
現行制度では、収入のない専業主婦の妻が離婚した場合に受け取れるのは基礎年金(現行月額6万6000円)のみで、報酬比例の厚生年金受給権はない。このため同省は、結婚生活中に世帯で支払った保険料に見合う厚生年金分については妻も一定割合を受け取る権利があることを制度上明確にしたうえで、収入の低い方の受給額が全体の半分を超えないようにすることを提案した。
ただ、分割割合は一律に決めず当事者同士の協議にゆだねることにしているため、裁判所に決定を求めることも想定するなど、あいまいな部分が多い。制度導入後の離婚からを対象にするが、新制度前の結婚期間を算入するか、結婚期間が短い場合の離婚も対象とするかなども今後詰める。
これまでの離婚訴訟では夫に対し妻に厚生年金の一部を支払うよう命じる判決も出ているが、応じないこともある。
同省はこれとは別に、専業主婦の妻ら「第3号被保険者」について、夫と保険料を半分ずつ負担しているとみなして厚生年金も半分受給する案を提案している。この仕組みを選択する場合も、離婚後の妻の年金受け取り分については離婚時の協議によって改めて決めるべきだとしている。
遺族厚生年金の見直し案は、サラリーマンに扶養される専業主婦など保険料を負担しない「第3号被保険者」に比べ、不利とされる共働き女性への給付水準を引き上げるもの。夫を亡くした妻が受け取れる厚生年金の水準を「夫と妻の老齢厚生年金合計額の5分の3」とする。妻の老齢厚生年金を満額支給したうえ、その金額が「夫と妻の老齢厚生年金合計額の5分の3」に満たない場合に差額を遺族厚生年金として支給する仕組み。
現行制度は、共働きで夫婦とも厚生年金に加入する世帯の夫が死亡した場合、妻は65歳になると自分の老齢基礎年金のはか@専業主婦と同じく夫の老齢厚生年金の4分の3A妻名義の老齢厚生年金B夫と妻の老齢厚生年金額の各2分の1ずつ−−の三つから一つを選ぶことになっている。
女性の老齢厚生年金は一般に男性より低いことから@を選ぶケースが多く、働く女性からは「長年納めてきた保険料が生きるよう給付すべきだ」との声が強かった。
専業主婦など保険料納付実績のない人は、夫の老齢厚生年金額の4分の3を受給してきたが、新制度では5分の3給付にとどまり反発も予想されるため、同省は専業主婦の選族年金の受給水準が下がらない案も示した。 【岩田啓志、鈴木直】