トピックへ戻る


日増える「返上」企業

厚生年金基金の代行運用

日本版401k法案、閣議決定


 サラリーマンが老後に受給する代表的な企業年金である「厚生年金」の基金は、大手中心の約1800社では、企業が国に代わって一部を運用してきた。しかし、予定の利回りを達成できず、企業側が穴埋めしなければならない事態になって、代行を返上する動きが加速している。    【後藤逸郎】


 ■1800社
 厚生年金は、月収の17.35%に当たる金額を企業と従業員が半分ずつ保険料として国に納め、国は、これを運用して対象者に年金を支給する仕組み。

 代行は、保険料の1部を国に納める代わりに、各企業が独自に設けている企業年金基金で運用する。厚生年金の予定利率は年5.5%で、代行してこれ以上の利回りを稼げば、その差益は企業独自の福利厚生に回せる。
 代行部分は、多い企業で数千億円に達し、代行で基金を増やすことが有利な運用につながった。もちろん、運用実績が予定利率を下回れば、企業が自分の責任で穴埋めしなければならないが、高金利時代には、そうした恐れも少なく、企業にとって代行するメリットが大きかった。

 ■制度化
 しかし、長引く低金利に情勢は一変。00、01年度は運用実績がマイナスになり、本業のもうけを基金に補てんする企業が急増した。自社の年金給付のための積み立てもままならない企業が増えたため、01年度には59の企業年金基金が解散した。こうした事態に、財界などから負担軽減を求める声が強まり、今年4月施行の確定給付企業年金法で、代行返上が制度化された。

 トヨタ自動車を皮切りに、日立製作所、そごう、松下電器産業、池田銀行、トナミ運輸、シャープなど112の基金が8月末までに代行返上を認められた。厚生労働省は「企業の厳しい経営環境を反映している」と見ている。

 現時点では代行返上の利点もある。代行のために積み立てを十分に行っていた企業は、代行返上に伴って、その積み立ての一部が会計上、特別利益になる。

 松下電器産業は基金加入のグループ5社で約500億円の特別利益が出る。シャープも特別利益を計上する見通しだ。

 ■足かせ  一方、積み立てが不十分な企業では、返上すると積み立て不足分を特別損失として計上しなければならない。そのために代行を返上できない企業も少なくない。

 超低金利が続く限り、代行問題が経済界の大きな足かせであることは変わらない。

2002年9月2日 毎日新聞