SSI ファイルの処理中にエラーが発生しました

トピックへ戻る


自民 年金論議 道筋見えず

政権の枠組み・選挙 意識


 厚生省案を受けた自民党の年金制度改革論議の行方は霧の中だ。景気に配慮、来年10月の保険料引き上げは凍結確実だが、将来に向けた引き上げ計画を認める前提での一時凍結か、計画全体も先送りかは整理しきれていない。すぐには痛みを伴わない給付水準抑制には容認論もあるが、少子高齢化社会の先行き不安をあおる懸念も根強い。ただ、負担も給付も手を付けず改革を先送りすれば政権担当能力を問われかねず、政権枠組みや次期衆院選も意識しながらの論議は難航必至だ。

 28日の党年金制度調査会。厚生省案の説明を受けた後、藤本孝雄会長は独自の検討項目案を示した。保険料引き上げ計画を「厳しい経済状況に配慮する」と当面は凍結する方向を示したほかは「年金の将来ビジョンを示し、安心と信頼を確保」「将来も確実な給付を約束、将来世代の負担を過重にしない」と抽象的な原則だけを掲げた。

 鈴木俊一社会部会長は記者団に「今日は厚生省案はわきに置き、議論したのは藤本メモだ」と強調した。官僚の案に捕らわれない姿勢で「政治主導」を演出したとも言えるが、厚生省案を基に突っ込んだ議論に入れば混迷するのは確実、とのためらいものぞいた。

 厚生省原案は新しい保険料引き上げ計画を示したうえ「当面五年間は引き上げを二段階に分ける」と当面の凍結は視野に入れる。党側には凍結を最長5年間とする案や「景気回復まで」と期限を決めない案もあるが、これらは計画自体の先送りに等しい。宮下創平厚相は期間の明示を求める姿勢で、今後の焦点となる。

 給付水準抑制への反発は保険料アップほどではない。支給開始年齢の引き上げは2013年度以降。賃金スライド停止も年金の絶対額を減らすわけではない。政調会幹部は「国民の負担感に直結しない」と手を付けやすいと見るが、負の心理効果への危惧も強く、慎重に取り組む構えだ。

 基礎年金の国庫負担率引き上げ(現行3分の1)などの抜本的な改革論議を、との意見も浮き沈みする。ただ、国庫負担率上げは巨額の財源が必要で、消費税率アップ論議につながる。抜本改革論のミソは「1年程度時間をかけて」と付け加える点で、目先の有権者の反発をかわすための改革先送りの色合いが濃い。

 自民党が景気に劣らず気にするのは選挙だ。来年春の統一地方選挙だけでなく、衆院の解散・総選挙に負担増がぶつかることを避けたい思惑がのぞく。総選挙の時期は不透明だが、2000年の任期満了をにらめば保険料凍結は2年より長くしようとする力学が働きそうだ。

 政権の枠組み作りにも密接に絡んでくる。年金改革法案を国会に提出しても、参院の与野党逆転で自民党案が成立する保証はなく、野党の理解を得ることを念頭に置いて今から議論を進めなければならない。

 2000年度には介護保険制度が始動、その保険料負担も加わるうえに医療保険制度の抜本改革も見込まれる。野中広務官房長官は「医療、介護、年金などを考えると(政権枠組みは)単年度だけでは考えにくい」と指摘している。

平成10年10月29日 日本経済新聞