厚生省は、代表的な企業年金である厚生年金基金の積み立て不足の一部を公的年金の資金で補てんする方向で検討に入った。各基金が国に代わって公的年金を支給する「代行給付制度」の積立金が補てんの対象で、不足額は5兆円以上になる見通し。99年の年金制度改革での導入を目指す。ただ、経済界では運用環境の悪化を背景に代行制度の廃止論が高まっている。公的年金資金による穴埋めは、代行制度の温存策につながる可能性があり、議論を呼びそうだ。
基金は公的年金である厚生年金に上乗せして年金を支給する部分と、厚生年金の一部を国に代わって支給する代行給付制度の部分で構成されている。
超低金利が続く中、厚生省は現在年5.5%を見込んでいる厚生年金の予定利率を次期制度改革で年4%程度に引き下げる方針を固めている。ただ、将来支払う年金はあらかじめ決まっており、年5.5%の利回りを前提にしていた積立金では代行部分の給付を賄えなくなる。
各基金が代行給付の原資にしている積立金は現在、推計で26兆〜28兆円。予定利率を1%強引き下げることで、5兆円以上の積み立て不足が発生する見通しだ。
厚生省は対応策として@厚生年金全体の積立金で各基金の積み不足を一気に穴埋めするA各基金が実際に年金給付に困ったときに厚生年金で補てんする−−などの仕組みを取り入れる方向で検討中。年金審議会(厚相の諮問機関)の協議を経たうえで年内にも結論を出す。
厚生省は、予定利率の変更に伴う各基金の積み不足を厚生年金の資金で補てんすることについて「年5.5%の予定利率を設定してきた国に責任がある」(年金局)と説明する。
ただこれまで各基金は代行給付のための積立金で年5.5%を上回る利回りを上げた際、超過分の運用益で従業員向けの福利厚生施設を作ったり、企業年金である上乗せ部分の給付の原資に回してきた経緯がある。一方、ここ数年の低金利で実際の利回りが年5.5%を下回った場合、企業が差額を穴埋めしており、経済界からは代行制度そのものの廃止論が出ている。