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場当たり的な農林年金統合


 農協、漁協の職員など約50万人が加入する農林年金(農林漁業団体職員共済組合)は、財政難を理由に厚生年金に統合してほしいとの方針を決定した。しかしこれまでのいきさつもあって、厚生年金側には反発もある。統合するにしても積立金の移管などで厚生年金に不利益が生じないようにしなければならない。またこれを契機に、公的年金の一元化のあり方についても改めて議論を進める必要がある。

 農林年金は公務員並みの高い年金水準を目標にしてきたため、保険料も高く設定してきた。ところが年金受給者が増える一方で、農協再編による加入者の減少で財政が急速に悪化してきた。このため厚生年金と統合することで危機を回避したいというわけである。

 農協、漁協の職員もかつては他の民間サラリーマン同様、厚生年金に加入していたが、59年に独自の制度を作りたいと、厚生年金から脱退した。しかし当時の事情を知る関係者の中には「政治力を使って強引に出ていった。財政が苦しくなったから戻りたいというにでは虫がよすぎる」という批判もある。

 また村山内閣の時に設けられた「公的年金制度の一元化に関する懇談会」の場でも、農林年金側は「職員の給与体系は地方公務員に準じている」として、統合するならむしろ地方公務員共済組合だという考えを示した。厚生年金に戻ることを拒否したのである。

 厚生年金に統合するにしても、赤字については自分たちで処理するというのでなければ、とうてい理解は得られないだろう。また過去の経緯に関しても十分な説明がなされなければならない。

 民間サラリーマンが加入する年金制度にはもう一つ私立学校教職員共済がある。ここも以前、厚生年金から脱退し、いまも復帰は望んでいない。若い加入者が多く、財政状況が比較的良好だからである。

 老人人口の増加により、どの年金制度もいずれは財政難に陥る。その時に備えてどのような一元化の姿が望ましいのかを決めておかなければならない。各制度の都合だけで処理するのでは済まされない。本格的な一元化論議を進める時である。

平成10年7月5日 日本経済新聞