農協や漁協職員などを対象にした公的年金制度である農林漁業団体職員共済組合は、民間サラリーマンの厚生年金と2000年度にも統合する方針を決め、厚生年金を所管する厚生省に打診した。加入者の減少で共済の財政悪化が予想されるため。同共済は将来の年金給付に備える約2兆円の積立金を保有しており、統合の際にはこの大部分を厚生年金に移管し、統合に伴う厚生年金の財政悪化を防ぐ。ただ、ここ数年の加入者の急速な減少を踏まえて移管すべき資産額を計算し直すと2兆円では足りなくなる恐れもあり、厚生年金側の反発で統合がずれ込むことも予想される。
農林共済は23日に方針を正式決定、同共済の監督省庁である農林水産省を通して厚生省に申し入れる。厚生省は99年の年金制度改革についての議論が一段落したあと、年金制度に関する閣僚会議を開いて統合手法をつめる。
農林共済は1959年に厚生年金から独立した。ピーク時の94年度には51万人の加入者がいたが、農協組織の合理化などで加入者は急速に減少。97年度には94年度比で約2万1000人減った。一方、年金受給者は増え続け、97年度末で約29万人に達した。このままでは年金制度として維持できないと判断した。
農林共済は統合に伴って移管金を出しても積立金が余ると見て、農協職員などに残余財産で厚生年金にさらに年金を上乗せして支給するための厚生年金基金を設立したい考え。ただ、積立金が余るとの見通しは加入者の急速な減少が始まる前の推計を基にしており、改めて計算すれば農林共済加入者の年金を賄うための移管金は2兆円では不足する可能性もある。
公的年金制度・・・・・・
全国民が加入する国民年金(基礎年金)を土台として、これに上乗せする形で民間のサラリーマンが加入する厚生年金、公務員の公務員共済、私立学校の私学共済、農林漁業団体職員の農林共済がそれぞれ分立している。各職業団体で独自に手厚い年金給付を実施することなどを目的に分かれている。
政府は各制度間で年金額や保険料が異なるのは不公平として、84年に公的年金制度を一本化する方針を打ち出した。しかし、財政状況の良好な制度が悪い制度との統合を嫌がることなどから統合は進まず、97年にようやく第一弾としてJR共済などが厚生年金に統合された。