掛け金の運用次第で年金の受取額が変動する確定拠出年金(日本版401k)が10月から導入されることになった。これまでの日本の年金は将来の受取額が約束された確定給付型だったが、確定拠出年金は運用方法を自分で指示する「自助努力型」だ。サラリーマンにとってメリット、デメリットの両面があるが、「雇用の流動化」「不景気」といった社会状況を反映した新制度でもある。
【渋川智明、末次省三】
401kの仕組み
<加入者と運用方法>
確定拠出年金に加入できるのは、国民年金保険料を支払っている60歳未満のサラリーマンや自営業者などで、専業主婦、公務員は対象にならない。
掛け金は、企業型が「資産管理機関」(信託銀行、生保、損保)に、個人型は国民年金基金連合に預けられる。運用は指定を受けた「運営管理機関」が、預貯金、公社債、投資信託、株式、信託、保険商品など三つ以上の商品を提示したうえで加入者の指示に従って運用する。拠出額は一定で、将来受け取る給付額は運用収益で変動する。これが従来の「確定給付型」と全く異なる点だ。
●4タイプ
企業型、個人型に大きく分けられるが加入の仕方は4種類あり、それぞれ掛け金の限度額(月額)が決まっている。@企業型ですでに企業年金(厚生年金基金など)がある=1万8000円A企業型で企業年金がない=3万6000円B個人型のサラリーマン=1万5000円C自営業者ら=6万8000円。企業型は企業年金の一種で、労使が話し合って導入を決め、企業が全額を拠出する。すでに外食大手のすかいらーくや日立製作所が導入を表明し、トヨタ自動車、ソニーなども前向きだ。
●運用・受取り
日興リサーチセンター年金研究所に4タイプの運用益などをシュミレーションしてもらった。例えば企業年金がない会社のサラリーマンAさんが企業型年金に40歳で加入し、仮に4%の利回りで運用されると、拠出額は864万円に対し、運用益は456万円。53%増の1320万円を受け取れる。
今年4月実施の年金改革で、1961年4月2日生まれ(今年40歳)以降の男性は厚生年金などの満額支給開始年齢が65歳になる。60歳定年ならAさんは退職後5年間、公的年金は出ない。しかし401kで5年間に分けて年金として受け取れば毎月22万円を受け取れる。
10年以上加入していれば、60〜70歳の間に給付を受け取る事ができる。受給方法、給付期間などは自分で選べるためライフスタイルに合わせることができるわけだ。
●持ち運び
大きな特徴は転職時に自分の口座の持ち運びができることだ。従来の企業年金は勤続年数が一定以上でないと支給されなかった。このほか、税制上のメリットとして@企業は拠出を損金算入できるA個人の拠出は所得控除の対象となるB受取時も税制優遇を受ける――などがある。
リスクもある。Aさんのケースはあくまでも4%で運用された場合だ。2%の利回りなら受取総額は1061万円に激減し、生活設計の変更を余儀なくされる。運用次第では元本割れというケースさえありうる。
宮井博・日興リサーチセンター年金研究所長(運用評価研究所長)は「加入するなら早ければ早いほど、そして拠出額が多いほど分散投資できる。加入期間が長ければ運用も有利になる」と指摘している。
●株対策
第一生命経済研究所の須藤一紀・副主任研究員は、企業型と個人型を合わせた日本版401kの残高が「2010年に約18兆円」と試算。この膨大な年金資金が、株式投資などを通じて直接金融市場に流入することで、株式市場が活性化するなど、多くの好循環をもたらすことを証券業界や民間シンクタンクは期待している。
1400兆円とされる日本の個人融資資産は、欧米に比べ預貯金に偏っているため、金融市場が活性化しないと言われ続けてきた。確定拠出年金の導入は、個人資産が大きく動き出すきっかけとなる。野村亜紀子・野村総研主任研究員は「年金資金は足の長い資金で、長期にわたって資本市場を支える」と指摘する。
米国では401kプランで個人資産が株式市場に流入し、長期にわたる高株や好景気を支えたとの分析が一般的だ。
【小島昇】