政府・自民党は、8月24日、農業者年金の「改革」案を決定しました。秋の臨時国会で法案を成立させ、早ければ来年度から新制度に移行する構えです。
農業者年金は、国民年金への上乗せ年金として、農業者の老後の生活安定に一定の役割を果たしてきました。また、農業経営の若返りや規模拡大の促進という国の農業推進とも結びついて運営されてきました。
「改革」案は、現状では年金財政が成り立たないとして現在の年金受給者の給付額を9.8%削減することなどが主な内容です。この案にたいし、農家から「国の制度だからと信頼してきたのに」「老後まで切り捨てるのか」という怒りの声があがっています。
政府が運営する公的年金で、給付額を削減するのは初めてです。ほかの公的年金制度に影響もでかねません。
この制度改革について、農水省は昨年暮れ、最初の「見直し」案を示しました。現行受給者の年金支給額を三割削減し、現在46歳未満の加入者は平均寿命まで達しても支払った保険料よりも受け取る年金が少ない、いわゆる”かけ損”になることが含まれていました。そのため、関係者の猛反発を呼び、政府・自民党は総選挙前の決定を見送っていたのです。
今回の「改革」案は、こうした声に配慮して”かけ損”は解消するとしていますが、年金給付額の削減は、当初案を縮小しながらも、その方針を貫いています。
農水省は、制度改革が必要になったのは、「高齢化で受給者が増える一方、後継者難などで加入者が激減し、年金財政がもたなくなったから」としています。受給者が75万人にたいし、加入者は29万人にすぎず、加入者一人が2.5人の受給者を支えているため、年間四百億円近くの財源不足が発生し、積立金も数年で底をつく状態だというのです。
そして、現役世代の保険料を引退世代の年金財源に当てる現行の「賦課方式」では制度がもたないとして、将来の年金財源を自分で積み立てる「積み立て方式」に転換するとしています。それにともない、現在の受給者に支払うための財源不足(九百億円強)を補うために農業者の年金額を削減するというわけです。
しかし、農業者年金の破たんの危機をもたらした最大の責任は政府の農政です。農産物輸入の自由化などで農業が成り立たなくされたもとで、後継者が激減するのは当然です。新しい加入者ができないばかりか、米価暴落を野放しにしたことも、農業経営を極端に悪化させ、保険料の支払を困難にし、年金財源の悪化に拍車をかけています。
これらの責任を棚上げにして、農業者に負担と犠牲を押しつけることは許されることではありません。
当面の見直しに当って、受給者や加入者に負担を押しつけず、不足財源は国の責任で確保すべきです。それは、ゼネコン奉仕の公共事業が国全体でも、農業分野でも、半分以上を占めるという予算の逆立ちを改めれば可能です。そして、農業者の老後の暮らしを守るためにも、農業が成り立たず、後継者が極端に不足するような自民党農政のありかたを根本的に転換することが必要です。